コーヒー品種図鑑 — ティピカからゲイシャまで
「エチオピア」「コロンビア」といった産地と並んで、豆袋によく書かれているのが品種(バラエティ)です。リンゴに「ふじ」「紅玉」があるように、コーヒーにも味の個性を左右する栽培品種があります。ここでは代表的な品種を、系譜をたどりながら整理します。品種を知ると、豆選びの解像度がぐっと上がります。
すべては2つの原種から
現在世界で飲まれているアラビカ種の品種は、そのほとんどがティピカとブルボンという2つの古い系統に行き着きます。イエメンからもたらされた原種がティピカ、それがレユニオン島(旧ブルボン島)で変異したのがブルボン。この2つの子孫が、交配と突然変異を繰り返して今の多様な品種になりました。
| 品種 | 特徴 | 代表的な豆 |
|---|---|---|
| ティピカ | すべての基礎。上品でクリーンな味わいだが、病害に弱く収量が少ない | コナ、ガラパゴス |
| ブルボン | ティピカより収量が多く、甘みとコクが豊か。バランス型の名品が多い | ブルボン アマレロ、アンティグア |
ブルボンから生まれた実用品種
ブルボンの突然変異や交配からは、生産現場で扱いやすい品種が数多く生まれました。カトゥーラ(ブルボンの小型変異、密植できて収量が高い)、ムンドノーボ(ティピカ×ブルボン、丈夫で生産性が高い)、カトゥアイ(カトゥーラ×ムンドノーボ)などです。中南米の多くの豆はこれらのブレンド品種で、コロンビアやコスタリカの安定したおいしさを支えています。
スターの品種たち
味の個性が突き抜けていて、指名買いされる「スター品種」もあります。
| 品種 | 物語と味 |
|---|---|
| ゲイシャ | エチオピア原産の系統がパナマで開花。ジャスミンやマスカットのような圧倒的な華やかさで、品評会の最高額を塗り替え続ける。ボケテ ゲイシャが代表格 |
| パカマラ | エルサルバドル生まれの人工交配種。大粒で、力強いコクと複雑な果実味を併せ持つ。パカマラ |
| SL28 / SL34 | ケニアで選抜された品種。カシスのような濃厚な酸味と果実味はこの系統ならでは。キリマンジャロやケニア ニエリ |
| ブルボン・ポワントゥ | ブルボン島で見つかった突然変異。カフェインが天然で少なく、繊細な甘み。ブルボン・ポワントゥ |
品種と「アラビカ/ロブスタ」は別の話
ここまではすべてアラビカ種の中の品種です。コーヒーにはもう一つロブスタ種(カネフォラ種)という大分類があり、こちらは苦味が強く香りは素朴な一方、病害に強く安価。インスタントや缶コーヒー、エスプレッソのコク出しに使われます。「品種」と「種」は階層が違う、と整理しておくと混乱しません。
品種を手がかりに選んでみる
華やかさが欲しいならゲイシャやSL系、バランスと甘みならブルボン系、クリーンな上品さならティピカ系——というように、品種は味の方向性を示す道しるべになります。豆をさがすでは各銘柄に品種を記載しているので、気に入った一杯の品種を覚えておくと、次の豆選びの精度が上がります。ブレンドを組むときも、ブレンドをつくるで品種の異なる豆を掛け合わせると、思わぬ相性に出会えます。